皆さん、おはようございます。

【これからの社長夫人は会社経営のプロになれ!】の著者で社長夫人戦力化コンサルタントの矢野千寿です。

 

ある中小企業で実際にあったエピソードをお話ししましょう。

その会社では数年間、赤字が続いていました。

ある年、会社全体としては依然として赤字でしたが、製造部門だけは1000万円の黒字を出しました。

工場長の努力と奮闘が大きかったことは明らかでした。

社長は工場長の功績を認め、少しでも給料を上げてやりたいと思いました。

しかし、経理の担当者は「無理だ」と言います。

「会社全体としては赤字なのだから、工場長の給料だけを上げるわけにはいかない」と言うのです。

それはそれで、もっともな理由ですが・・・

あれだけがんばってくれた工場長に何も報いることがないままでよいのでしょうか?

そこで動いたのが社長夫人でした。

彼女は工場長と個人的に面談して、自分の言葉で労をねぎらったうえで、

家計から捻出した数万円をそっと手渡したのです。

「今はこのくらいしかできません。でも、あなたががんばってくれているから。

来年はもっとよくなるに違いないわね」

お涙ちょうだいの人情話のように聞こえるかもしれません。

でも、そうではないのです。

成果を上げた社員に報いるのは、将来への投資でもあります。

1年間がんばって1000万円の黒字を出した工場長が、

もし何のねぎらいの言葉も、わずかな報奨金すらもらえなかったら、

翌年、ふたたびがんばって働こうという気持ちになるでしょうか?

社長夫人は「1+1」の金勘定だけでものごとを考えてはいけません。

この社長夫人は、広い度量をもち、将来のことまで戦略的に考えることができました。

だからこそ、社長夫人として自分がなすべきことを行うことができたのでしょう。

しかし、もし彼女が自分で経理事務を行っていたら同じ判断ができたかどうかはわかりません。

社長夫人が行うべきは「経理」ではなく、「財務管理」なのです。

財務管理には、財務諸表による経営管理、売掛金の回収や買掛金の支払、

借入金の調達と返済、設備投資、手形の管理と決済、資金繰り表の作成、

財務計画の立案など、重要な仕事がたくさん含まれています。

そのうえで、社長が重要な意思決定をサボートするための資料づくりまで

求められるのですから、もちろん楽な仕事ではありません。

でも、楽な仕事ではないからこそ、社長夫人の力の見せ所となるのではありませんか。