皆さん、おはようございます。
【これからの社長夫人は会社経営のプロになれ!】の著者で社長夫人戦力化コンサルタントの矢野千寿です。
会社の業績が悪化すると、「不況で売上が伸びないせいだ」と答える経営者が多いようです。
しかし、経営が行き詰まる原因は、つねに不況のせいとは言えません。
また、売上を伸ばすことだけが効果的な改善策とも限りません。
苦境を打開する方法は、その会杜の状況により、また諸条件により異なります。
経営が悪化した原因を正しく見極めることができてこそ、適切な改善策を打ち出すことができるのです。
たとえば、一人当たりの労働生産性が低い場合、改善策としてリストラを考える経営者も多いでしょう。
しかし、労働生産性が低いのは、ほんとうに社員が多過ぎるためなのでしょうか?
もしかしたら、社員のモラルや意識が低いせいかもしれません。
人員配置や労働環境が悪いためかもしれません。
だとしたら、社内の意識改革や配置転換を図ることによって、リストラなしでも労働生産性を上げていくことが可能です。
資金力に余裕がない中小企業にとって、重視すべきは売上によりも利益であり、命綱となるのはキャッシュフローです。
会社が万が一の備えとして、いつでも使える現預金の準備が必要ですし、それに見合った利益を出さなければいけません。
ただし、売上を重視しなければならない場合もあります。
ある和菓子メーカーのケースを紹介しましょう。
その会社は地域ではよく知られた老舗で、県内に数店舗を展開しています。
主力商品は和菓子ですが、数年前からケーキを中心とする洋菓子の販売も始めました。
ところが、そのケーキの販売がなかなか軌道に乗りません。
和菓子と比べて、返品率が高いことが最大の問題でした。
社長はため息まじりにおっしゃいました。
「洋菓子を始めたのは失敗でした。返品率が20%近くもあるんです。
こんなことではやっていけないから、もうケーキはやめようと思っています」
決算書を見ていた私は、驚いて言いました。
「社長、ちょっと侍ってください。今、ケーキの販売をやめたら大変ですよ!」
「返品率20%」は確かに問題ですが、それでも洋菓子部門の売上は会社の売上全体の30%を占めていたのです。
ケーキの販売をやめた場合、30%の売上減をカバーできる商品が他にあるのでしょうか?
あるいは、売上が30%減っても十分な利益を確保する方策はあるのでしょうか?
この和菓子メーカーがしなければならないのは、ケーキの直売をやめることではありません。
ケーキの返品率を下げればいいのです。
返品率が高いのは、仕入れる量が多過ぎるせいなのかもしれません。
品揃えに魅力がないためかもしれません。
その原因を分析して、仕入れた分を売り切るように改善すべきです。
そうすれば、返品率が下がることで利益の増加を図れます。
効果的な経営改善策は企業により、状況により異なります。
しかし、ヒントは常に決算書のなかにあるのです。