皆さん、おはようございます。

【これからの社長夫人は会社経営のプロになれ!】の著者で社長夫人戦力化コンサルタントの矢野千寿です。

 

あるとき、私が長く顧問を務めてきた中小企業の社長が、高齢を理由に引退することになりよした。

社長夫妻には子どもがなく、他の後継者もいません。

社長は会社を売却することを決意しました。

社長が望んだ条件は、社名を残すことと社員を一人も解雇しないこと。

正直言って、社長も私も半信半疑でした。

中小企業受難の時代に、そんな都合のよい条件で会社を買ってくれる相手が見つかるものでしょうか?

結果は、私たちの期待をはるかに超えるものでした。

こちらが提示した条件が認められただけでなく、驚くような価格で売買契約がまとまったのです。

売り手である私たちも、買い手である先方の企業も、100%満足のいく理想的なM&Aとなりました。

なぜそのM&Aはそれほどうまくまとまったのでしよう?

第一の理由は、この会社が先方の求める高い技術と独自のサービスをもっていたこと。

第二の理由は、社長夫妻が堅実経営を続けてきた結果、この会社は自己資本比率が高く、財務状態がとてもよかったこと。

そして、第三の理由は、この会社の決算書の中身が公私混同もなく非常にきれいで、疑わしいところや不明な点がまったくなかっかことです。

この会社は3社に分社していたのですが、将来のために1社に統合し、資産などわかりやすくしていた成果でした。

つまり、この会社の社長夫妻は、やるべきことをきちんとやっていただけです。

その積み重ねが、いざというときに大きな価値を生み出したのです。

なかでも、決算業務をすベて自分の手で行ってきた社長夫人の貢献は大きかったと思います。

M&Aのようなケースに限らず、銀行や収引先が相手企業を評価する際には、決算書を徹底的に分析します。

貸借対照表も損益計算書も、漠然とながめるだけなら単なる数字の羅列ですが、

特定の意図をもって読み解き、分析し、比較すれば、いろいろなことが見えてくるのです。

社長夫人が決算書を作成するだけでなく、経営者の目で決算書を読めるようになれば、鬼に金棒ではないでしょうか。

決算書が読めれば、業績が伸びない原因や、会社が抱える課題を発見することができます。

問題点が見つかれば、それらを社長に報告して、一緒に改善策を考えることができます。

その結果、会社は倒産の危機を乗り越えることができるかもしれません。

それどころか、さらに発展できるかもしれません。

決算書のデータを経営判断に役立てるとは、そういうことなのです。

もちろん、自分の会社を高く売るために決算業務を行おうと考える社長夫人は少ないでしょう。

しかし、いずれ会社をM&Aするにしても後継者に委ねるとしても、

経営基盤を整え、できるだけよい状態で引き継ぎたいものではあリませんか。