皆さん、おはようございます。
【これからの社長夫人は会社経営のプロになれ!】の著者で社長夫人戦力化コンサルタントの矢野千寿です。
会社の経営に携わっていると、「今年は生産性の向上をめざす」とか「今回は生産性を10%アップする」といった言葉を聞くことがよくあります。
「生産性」とは、具体的には何を意味しているのでしょうか?
生産性の意義についてお話する前に、まずは生産性に関わる実例を1つご紹介したいと思います。
その一つ、C社は、東日本の大都市圈にあるシステムエンジニアリングの会社です。
創業以来28年、順調な発展を続けてきましたが、現在は倒産の危機に直面しています。
売上は約3億6000万円、従業数52名で、売上高経常利益率は-3.1%です。
貸借対照表を見ると固定負債が71・9%で、流動負債を加えると、実に全資本の84.9%を他人資本に依存しているためです。
これでは、ほとんど利益が残りません。
一体なぜ、こんなことになってしまったのでしょう。
その原因は人件費にあります。
売上が約3億6000万円に対して、人件費の総額は2億5000万円に達しています。
売上高に占める人件費の比率は70%。
要するに売上の70%が人件費に使われているということです。
そこで一人当たりの売上を見ると692万3000円(年間)です。
そのほか
一人当たりの生産性(=付加価値÷平均従業員数)は560万5000円
一人当たりの営業利益は-20万9000円
一人当たりの経常利益は3800円
労働分配率は86%
明らかに生産性が悪くなっている状態です.
C社の業績が急速に悪化し始めたのは、ほんの2、3年前のことでした。
リーマン・ショック後の不況が始まると同時に顧客数が激減したのです。
しかし、社内のエンジニアは今も52名.
リーマン・ショック前と変わりません。
売上が落ちたのに従業員数が変わらなければ、人件費の負担は重くなります。
危機を乗り切るには、思いきったリストラが必要です。
そんなことは、社長にもわかっていました。
しかし、なかなか覚悟がつかず、「もう少しすれば景気も好転するのでは・・・」と迷い続けているうちに、「足りないからまた借りてくる」のくり返しで、借金だけが雪だるまのように膨らんでしまったのです。
C社の社長夫人も「社長夫人革新講座」の卒業生です。
8年前に夫である社長が大な怪我をして以来、その後遺症で今までのように積極的な経営ができなくなっているようでした。
突然、社長夫人から相談したいことがあるという電話がありました。
社長夫人の悩みは、このまま事業を続けてよいのか、会社を閉めたほうがよいのではないかという内容でした。
しかし、会社を倒産させるのは大変なことです。
社長の自宅や土地などの個人資産は抵当に入っていますから、社長一家はすべてを失うことになりかねません。
社員も全員解雇しなげればなりません。
C社に関わるすべての人がつらい目にあうのです。
私は、「倒産させるのも大変なエネルギーがいるし、一人当たりの生産性から見るとエンジニアを10人解雇すれば会社は救える」と判断しました。
そこで社長夫人に「再建できるかもしれないが、かなりの覚悟がいる」という話をしました。
それから1週間後に「これからは副社長として会社の再建に収り組みますので、ご指導お願いしたい」という内容のメールが届きました。
副社長はさらに社内に向けて次のような方針を発表しました。
「私には子供がいません。私にとっては社員の皆さんが子供です。社員を解雇することはしたくありません。みんなでこの苦境を乗り越えて社員が幸せになる会社を目指しましょう。」
こうしてC社では社員を解雇することもなく再建に取り組むことになりました。
そのためには、売上を上げることから始めなければなりません。
売上を上げるという対策とともに、問題の人件費を削減するために賞与のカットを行いました。
これにより半年で約1000万円の経常利益が出ました。
現社長も非常に喜び、2年後には社長夫人が正式に社長に就任する予定です。