皆さん、おはようございます。

【これからの社長夫人は会社経営のプロになれ!】の著者で社長夫人戦力化コンサルタント矢野千寿です。

これまで述べた成長性の原則を念頭に置いたうえで、具体的な事例をもとに成長性を分析してみましょう。

まず、安全性、収益性ともに問題の多かったB社の場合、成長性に関してはどんな結果が出るのでしょうか?

39期を基準年度として、42期までの4年間の趨勢をもとに分析します。

私自身が経営支援のお手伝いをするようになったのは、2年目の40期からでした。

まず体格面について見ると、以下のような結果となりました。

①人員増加率は100・0‰で変化なし

②総資本増加率は年々下がっており、42期には86.9%まで低下

③売上高成長率には波があり、41期には109.5%まで伸びたが、42期にはふたたび102.9%に低下

つまり、この4年間、人員の増加はありませんでしたが、売上高は39期と比べてわずかながら増加しています。

41期は急激な売上高の伸びを示していますが、何らかの特殊な要因による一時的な伸びだったと考えられます。

このような一時的な急増や急減はよくあることで、だからこそ3年以上の期間で比較することが必要なのです。

前年対比だけでは、一時的な増減にまどわされ、正しい分析ができない可能性があります。

特筆すべきは、総資本が着実に減少していることです。

8000万円で購入した別荘の管理営業権を4年間にわたって償却してきたためですが、おかげで総資本がスリムになりました。

そのぶん総資本増加率が人員増加率を下回ってしまいましたが、これまで肥大化していたことを考えれば、体格面のバランスはむしろよくなっていると言えるでしょう。

一方、体質面では以下のような数値となりました。

④売上総利益増加率は、40期に119.6%まで伸びたものの、41期は96.0%、42期は87.0%と低下

⑤営業利益増加率も、40期に169.2%と急激に伸び、その後、101.0%、81.0%と低下

⑥経常利益増加率も、やはり40期に465.6%という極端な伸びを示したが、その後は53.4%、52.8%と急激に低下

⑦自己資本増加率は毎年少しずつ伸び.42期には111.2%まで上昇

売上総利益増加率、営業利益増加率.経常利益増加率ともに、40期に大きな伸びを示していますが、これは新築の受注があったためで、一時的な増加に過ぎません。

40期を別にすれば、一見してわかるとおり、売上総利益増加率、営業利益増加率、経常利益増加率ともに低下しています。

とくに営業利益増加率は、ふつうは販売管理費が減少すれば好転するものです。

ところがB社では、39期に3826万2000円だった販売管理費が42期には3406万4000円まで減少したにもかかわらず、営業利益増加率が81.0%まで低下しています。

さらに、経常利益増加率にいたっては、営業外費用の支払利息や営業権償却が減少しているにもかかわらず、52.8%と半分近くまで落ち込んでしまいました。

要因の一つが、この4年間で売上総利益率が22%から18.7%に低下したことにあるのはあきらかでしょう。

売上総利益が低下した理由は建築部門の原価管理の甘さにありました。

売上総利益は、営業活動における原資であり、その増減に会社経営がどれほど大きな影響を受けるかがおわかりいただけると思います。

結果的に、体質面でのバランスはかなりいびつなものとなりました。

ただし、総資本や営業外費用の減少によって、確実に改善の兆しは見え始めています。

むしろ、業績が好転し始める直前の状況と言えるかもしれません。