皆さん、おはようございます。
【これからの社長夫人は会社経営のプロになれ!】の著者で社長夫人戦力化コンサルタントの矢野千寿です。
A社とB社を例にとって、総資本経常利益率を具体的に見てみましょう。
A社の22期の貸借対照表を見ると、総資本は1億1005万2000円。
一方、損益計算書から経常利益が1072万3000円であることがわかります。
したがって、総資本経常利益率は9.7%。
「良好」の範囲内にあり、少ない資本で大きな利益を生み出しています。
最大の要因は、やはり創業以来22年間、1年も欠かさず利益を出し続けてきたことにあるでしょう。
結果、借入に依存しない経営を実現できました。
固定負債にある長期借入金1505万5000円は社長の個人資産からの借入ですし、流動負債の1814万9000円は買掛金などですから、実質的には無借金経営と言えるのです。
B社はどうでしょう。
42期の貸借対照表から、総資本は2億8259万8000円。
これに対し、経常利益はわずかに68万5000円。
総資本経常利益率を計算してみると0.2%という、きわめて低い数値になってしまいました。
B社の売上高2億3915万1000円はA社の2億3404万5000円とほとんど同じですから、両社は売上の点では同じ規模にあると考えられます。
にもかかわらず、なぜこれほどの開きが生じてしまったのでしょう?
総資本経常利益率を悪化させる要因は二つ考えられます。
第一は、分子である経常利益が少ないこと。第二は、分母である総資本が大き過ぎることです。
B社の場合、68万5000円という金額から見ても、経常利益が少な過ぎることはあきらかでした。
そこで、経常利益より一つ前の段階の利益である営業利益を見ると、1057万3000円。
意外なことに、ここではA社の営業利益884万9000円を上回っています。
ところがB社の場合は、無計画な投資にともなう多額の借入利息や、
無形固定資産である別荘管理の営業権償却費が負担となって、
せっかく本業の建設部門で儲けた営業利益のほとんどを相殺しているのです。
しかし、原因がわかれば対策もたてやすいもの。
借入金の返済利息と別荘の管理営権。
これを何とかすれば、B社の経営再建は可能なはずです。
まず借入金の返済については、少しでも有利な条件に変更してもらえるよう、詳細な財務データや経営改善計画を示しながら、粘り強く銀行と交渉しました。
ここで生きたのが、社長夫人が毎日、けっして手を抜かずに作成してきた試算表や財務諸表です。
その成果あって、B社は銀行の説得に成功。
2年間の期限付きで、毎月の返済額を半分にしてもらえることになったのです。
ポイントとなったのは、
経費のなかに製造原価の減価償却費が116万円、
販売管理費の減価償却費が258万円、
さらに、営業外費用のなかにも、別荘の管理営業権の償却費として551万円、
貸倒損失96万円が計上にされていることでした。
これらを合計した約1024万円は、書類上はたしかに費用や損失となりますが、キャッシュフローで見れば「ある」お金です。
つまりB社には、その約1024万円と経常利益の68万5000円を合わせて、1092万円近くの留保がありました。
だからこそ、銀行も再建可能と判断し、条件変更に応じてくれたのでしょう。
私たちは、この2年間が勝負だと考えました。
2年の間に体制を整え、別荘の管理営業権を活かした事業を軌道に乗せることができれば、B社の経営を立て直すことができるはずです。