皆さん、おはようございます。

【これからの社長夫人は会社経営のプロになれ!】の著者で社長夫人戦力化コンサルタントの矢野千寿です。

私は、B社の経営改善の突破口を探すため、社長夫人と一緒に、B社が行った過去数年間の投資や借入の内容を一つひとつチェックしてみました。

その過程で、不可解な投資にともなう大型借入が2件見つかりました。

一つ目は、骨董品の壺と大量のウーロン茶の購入です。

聞けば、創業者である現会長が数年前に台湾を旅行した際、旧知の現地ビジネスマンから勧められ、1200万円で購入したのだと言います。

しかし、建設会社が壺やウーロン荼を仕入れても、簡単に販売できるはずはありません。

実際、それらのほとんどは棚卸資産として在庫に眠ったままでした。

今後、売れる見込みのない不良在庫です。

もう一つは、B社の地元である有名避暑地の一角に造成された別荘地の管理営業権です。

この権利を購入するために、B社は数年前に8000万円の借入を行っていました。

避暑地で営業する建設業にとって、別荘の管理営業権は悪い買い物ではありません。

建物の修理や改築、管理、清掃をはじめとして、できることはいくらでもあります。

少なくとも、壺やウーロン茶よりよほど可能性があるはずです。

問題は、8000万円もかけて管理営業権を買ったにもかかわらず、十分に活用していな
いことでした。

プロパンガスの販売や建物の修理などの依頼があれば応じるものの、積極的に営業をかけたり、宣伝を行ったりはしていませんでした。

つまり、8000万円分の無形固定資産が、壷やウーロン茶と同様、倉庫に眠ったままになっており、合わせて1億円近い借入金の負担だけがのしかかっていたのです。

しかも借入金は、毎月きちんと返済できるだけの利益が上がらなかったため、不足分を追加して借り入れる連続で、総額1億8000万円にまで膨れ上がっていました。

これだけ借りれば金利だけでも年間数百万円になるはずですが、当時のB社の営業利益は年に1000万円程度.

どう考えても、お金が回るはずはありません。キャッシユフローが滞るのは当然だったのです。

しかし、突破口は見つかりました。

壷とウーロン茶の1200万円はどうしようもありません。

少しでも有利な条件で、できるだけ早く返済するしかないでしょう。

ただし、別荘の管理営業権は違います。

工夫しだいでは、着実な利益を生んでくれそうです。

B社の決算書を詳しく分折すればするほど、私にはB社の将求は明るいように思えてきました。

一方、財務体質超優良のA社には、何も改善すべき点はないのでしょうか。

「城は一夜にして建たず」という言葉がありますが、A社は創業以来22年、一度も赤字を出したことがない稀有な中小企業です。

A社の社長や社長夫人は、「企業は絶対に赤字を出してはいけない」「企業が赤字を出すのは杜会的な罪悪だ」という理念のもと、22年間にわたって堅実経営を続けてきました。

しかし、やはり経営上の課題がないわけではありません。

財務体質が優良な企業に特有の落とし穴もあるのです。

ここで何らかの手を打たなければ、いずれB社に逆転されるかもしれません。