皆さんこんにちは、矢野千寿です。

ここで勘違いしないでいただきたいのは、「理念の共有」は「理念の完全な一致」とは異なるということです。

社長と社長夫人が理念を共有すると言っても、二人の理念が100%同じである必要はありません。

社長と社長夫人はもともと違う人間ですから、異なる部分があって当然です。

社長が倒れて社長夫人が経営を引き継いだときに、それがよくわかります。

社長と理念を共有していたとして、それまでの経営とまったく同じになるかと言えば、そうはなりません。

社長夫人なりの理念が出てくるからです。

本来、社長夫人が全面的に社長の理念で生きるのは不可能です。

そうしようとすると無理が出てきます。

社長夫人の理念が借り物になってしまうので、独り立ちしようとするときに苦労します。

自分の力で新しい理念を作るのは苦しいものです。

社長と共有しながらも、自分だけの理念も育ててあれば、万が一、社長が倒れたりといったときには、自分の理念によって「自立型」になることができます。

理念の共有とは、根っこのところで理念が一致していることと考えてはどうでしょうか。

その根っこから出た一番太い中心となる幹が社長の理念です。

そして、同じ根っこから出た別の幹や、社長の幹から分かれた枝が社長夫人独自の理念です。

ビジネスパートナーとしては、中心となる幹をもっとも重視し、それに合わせて仕事をします。

ここが表面に見えるところです。

見えないところ、つまり根っこのところは、あくまでつながっていて一体となっていなくはいけません。

根っこが別々では理念の共有は表面的なものに過ぎず、本当の共有にはなりません。

共通の根っこを持ち、中心の幹に添って生きながら、自分独自の幹を育て、新しい枝をつくっていく。

これが、社長夫人の目指す道です。

ある社長夫人は、会社の発展と社員の自己実現を一体のものとしてとらえようと考え、悩んだあげくに「愛社精神」という理念にたどり着きました。

会社を愛することは、会社のためにもなるし社員のためにもなる。

そして、愛社精神を実現する要素として、規律性・責任性・協調性と積極性の4つを示したのです。

社長もこれを了承し、その管理・育成を社長夫人にまかせました。

この「愛社精神」は、社長の理念と同じ根っこから出た、社長夫人独自の理念です。

社長夫人独自の理念は、社長の理念を補完し、経営理念を充実させることで会社の発展に寄与します。

社長の理念に基づきながらも、
自分の理念、言い換えれば自分の役割と使命を見い出したとき、
社長夫人は、ビジネスパートナーとして確固とした存在になります。