皆さんこんにちは、矢野千寿です。

社長と社長夫人とで、もう一度、経営理念やその底に流れている人生理念について話し合うことが大事です。

経営理念、人生理念の共有が、社長夫人がビジネスパートナーに育つ基盤です。

男性は、その種の本音を吐露することにシャイなところがあります。

なかなか話したがらない。

社長夫人は、社長の言動から社長の理念を推測し、それを社長にぶつけてみてください。

わかりやすい手がかりは、社長が口にする嘆きや悩みです。

これは自分が思っている理念が実現できていないことの裏返しです。

それをもう一度、裏返すと理念が見えてきます。

たとえば、「売上が思うように上がらない」という嘆きを聞いたとします。

これに対して、「では、どうしたらいいか」と問題を追及するのではなく、「なぜ、売上を上げたいのか」と投げかけることで理念を探ります。

「社員を楽にしたい」

「お客さんのもっと愛されたい」

「新しい事業をやりたい」など、いろいろな答が返ってくるでしょう。

そこからさらに話を広げていくと、次第に理念がはっきりしてきます。

もっとお勧めの方法は、会社を起こした頃に立ち返って、そのころの夢や思いを聞くことです。

多くの社長は、昔のことに水を向けられると、とたんにおしゃべりになります。

「あの頃は大変だったよ」「ずいぶん苦労してねえ」などと滔々と語るものです。

自分がどんなことをしてきたのか、どんな思いで会社を始めたのか。

懐かしさもあるし、自分の足跡を聞いてもらえることに喜びや満足感があります。

話しているうちに、気持ちが若返るように見えることさえあります。

社長夫人は、話の引き出し役、聞き役に徹すればいいのです。

「大変でしたねえ」「本当にそうでしたね」「そんなふうだったんですか」などと、あいづちを打つのです。

社長夫人も同じ人生を歩んできたのですから、社長と同じ思い出があるでしょう。

そのような話が出たら、自分も記憶をたどりながら共感のあいづちを打ってください。

社長の意外な側面や思いを聞いたら、素直に驚けばいいのです。

そうしていろいろな話を聞きながら、理念の芯を見つけてください。

理念の芯は、創業時の夢にあります。

「地域で一番の店にしたい」

「お客さんに心から喜んでもらえるような商売をしたい」

「地域の皆さんに役に立つ会社にしたい」

それぞれの社長に、それぞれの夢があったはずです。純粋な夢です。

それが、長い年月の間にコケが生えて埋もれてしまっています。

「売上が上がらない」「金がない」「人がついてこない」など

目先のことばかりに気をとられて、もともと持っていた夢を忘れたり、わからなくなったり、歪めたりしています。

創業時の原点に立ち返ることで、本来の夢を思い出します。

そこに人生理念、経営理念の糸口があります。

社長夫人に話すことで、純粋であった頃に戻り、忘れていた本来の夢を思い出します。

「もともとは、そういう考えだったのですね」などと受け答えしていくことで、社長自身の考えが整理され明確になっていきます。

社長夫人はそれをサポートすればいいのです。

タコの足には、長年の間にイボイボがたくさんつきますが、一皮むくと真っ白い身が表われます。

社長も一皮むくと純粋な夢が見えてきます。

社長夫人は、そのお手伝いをします。

創業時の夢は、純粋なだけに人生理念と一体化しています。そこに原点を置けば、本物の経営理念ができます。

社長と社長夫人とで話し合いを重ねることで、社長夫人は社長の理念を理解し、それを社長と共有してください。

その経営理念と、今の現実とのギャップを分析していくと、これからすべきことがより具体的に見えてくるはずです。

社長の口から理念と言えるほどまとまった考えが見えてこない場合は、話の中からキーワードを拾っていきます。

繰り返し出てくる言葉、強調される言葉、社長が気に入っている言葉、社長夫人が気になる言葉、社長の理念に近いと思える言葉などをどんどん書き留めていきます。

片端からパソコンに入力していくとよいでしょう。

量がたまったら分類したり、整理したりして理念として固めていきます。

これは、理念に限らず考えなどをまとめるにはよい方法です。