皆さん、おはようございます。

【これからの社長夫人は会社経営のプロになれ!】の著者で社長夫人戦力化コンサルタントの矢野千寿です。

 

後でわかったことですが、経理事務員が「原価を引いても25%は残る」と言ったとき、

「原価」に含まれていたのは、材料費や外注費だけでした。

しかし「原価」には労務費である現場監督の給料や製造経費なども含まれます。

これらを加えると、この会社の製造原価の比率は売上に対して90%になっていました。

残り10%の売上総利益から役員報酬や販売管理費、減価償却費、支払利息といった

費用を差し引くと毎年4000万円の赤字が出ていたのです。

社長が気づいたときには、すでに手遅れでした。

その会社は資金繰りに行き詰まり、ついに5億の負債をかかえて倒産してしまいました。

放漫経営と言えば、確かにその通りです。

しかし、社員の先頭に立って営業に走り回っていた社長には自分で帳簿をチェックする時間がなかったのでしょう。

それでもコストを気にして、たびたび経理事務員に確認していました。

ところが困ったことに、社長と経理事務員との間で、「コス卜」の認識が違っていたのです。

その経理事務員には、「どれくらいの儲けになる?」と聞かれたとき、

社長が何を知りたがっているかがわからなかったのです。

そこにもう一人、社長の経営方針を熟知している補佐役がいて、経理事務員を指導できていれば、

そして社長に的確な判断材料を提供できれば、その会社の行く末はずいぶん違っていたことでしょう。

私は社長夫人にそういう役割を担ってほしいと考えているのです。

社長夫人たちに自分で決算を行うよう勧めているのも、そのためです。

この会社の社長夫人は、「社長夫人革新講座」を2回受講し、資金繰りもしっかり勉強し、

何とか社長の暴走をくい止めようと必死で勉強していました。

しかし、社長は夫人の進言に耳を貸そうとしなかったのです。

倣慢な人、人の話に耳を傾けない人、感覚で経営をしている人のことを“無知の我流”といいます。

この会社の社長もそういうタイプでした。

ある年の12月でした。

社長夫人から「先生、今日不渡りを出します」という電話があり、

私は「社長はどういわれているの?」と聞くと「3年前にお前と矢野先生の言われることを素直に聞いていたらこんなことにはならなかった、と言っています」と応えました。

社長は40代の前半でまだまだ若いし、再起できると信じました。

あれから数年経ちます。

社長夫人からは時々電話がありますが、自宅も売り、社長の実家に引っ越して、二人で頑張っているようです。