皆さん、おはようございます。

矢野千寿です。

ある会社の社長は、応接室で私と話しているときは、すごく穏やかな印象です。

にこやかで目尻も下がっています。

ところが、応接室から事務所に出ると、とたんに、目がつり上がって、とても厳しい険しい顔つきになって、人を寄せ付けないような雰囲気を漂わせます。

私には、この極端な変わりようが不思議でしたから、社長に聞きました。

「なぜ、私と話しているときと、事務所にいるときとで、表情がそんなに違うんですか」

社長を責めるつもりはなかったのですが、社長にとっては予想外の質問だったらしく、とてもショックを受けたように見えました。

それほどの違いを自分では気づいていなかったのでしょう。

そのあとで会ったら、「あのひと言は堪えました」と、やややつれたような様子でした。

同じような社長は多く見受けます。

社員に対してきつい表情をして、まるで社員を敵対視しているような雰囲気を漂わせています。

社員と戦っているかのようです。

本人としては、威厳を見せて、社長という地位や存在をアピールしているつもりなのでしょう。

私に言わせれば、

「そんなに無理をしなくても、よいではありませんか」

「そんなに表面を取り繕わなくても大丈夫ですよ」

ということです。

言い換えれば、「もっと素直に自分を出したらいかがですか」ということです。

穏和な性格、善良な人間性は社長業にマイナスではありません。

社員は、そういう社長だからついてくるということだってあります。

それに社員は、うわべにだまされずに、本質がわかっているものです。

そこに気がつかないで、社長だけが「社長の威信」という鎧を着て肩肘張っている。

滑稽ではありませんか。

相手が自分の妻、つまり社長夫人なら、なおさらです。

これまでの夫婦としての生活のなかで、社長夫人は社長の根本をすっかり見抜き理解しています。

今さら、社長のパフォーマンスに惑わされることはありません。

社長は、社長夫人に自分の本当の姿をさらけ出してください。

それでこそ、不自然な虚飾にとらわれない、本音のコミュニケーションができます。