皆さん、おはようございます。

矢野千寿です。

社長も人間ですから、長い間には波があります。

常にトップとして会社や社員を引っ張っていくことができればいいのですが、それが難しくなるときもあります。

病気などでそうなることもあるし、精神的な要因があることもあります。

波が引いているときは、社長本人も苦しんでいます。

こういうときこそ、両脇を抱えてくれる人が必要です。

そういう人がいれば、社長はなんとか踏みこたえることができる、頑張って盛り返すことができるはずです。

ところが、支える人がいないばかりに、社長だけが苦しみ、会社も先細りになっていくという例がたくさんあります。

私はそういう社長を何人も見ています。

私自身が、「周りが脇を抱えてくれたら、もっとやれるのに」と思ったこともあります。

それをするのが社長夫人です。

苦しいときこそ、社長夫人というパートナーが必要です。

つまずいて転びそうになる二人三脚を、何とかこらえて元のいい姿に戻すのが社長夫人の役割です。

安全関連用品を販売しているある会社があります。

社長が病気になって、入退院を繰り返しながら、何とか仕事をこなしていましたが、体力がすごく落ちて先行きに不安を持っていました。

業務の柱の一つに、顧問先の社員を対象とした安全教育・安全指導というコンサルティング業務があって、社長がそれをしていましたが、体力がなくてできなくなってしまいました。

どうしたらいいかとなったときに、社長夫人が決断しました。

「社長が元気になるまで、私が社長に代わって話をしよう」

社長のような話はできないからと、もっぱら社長の考えや仕事について話をしたそうです。

社長は、1ヶ月ほど治療に専念して健康を回復し、仕事に復帰したそうです。

この社長夫人がみごとだなと思うのは、「男じゃないか」「夫じゃないか」「社長じゃないか」などとは、これぽっちも考えなかったことです。

ここが肝腎なところです。

「とにかく、社長をゆっくり休ませたい。そのために私が頑張る」

そういう思いだけで、やってきたと言います。

その結果、社長から「君がパートナーでよかった」という言葉をもらったばかりでなく、社長の代役を務めることで、社長の考えや仕事ぶりがよく理解できるようになり、改めて社長の偉さがわかった、というおまけまで付いたそうです。

創業時の夢をある程度達成すると、会社経営の意欲を失い行き詰まる社長がいます。

この厳しい時代に、「ある程度」とはいえ夢を達成するとはうらやましいことですが、その満足感と「一段落した」という気持ちが意欲を損なうのは理解できないことではありません。

そういう社長はけっこういると思います。

しかし、会社は停滞を許されません。

飽くなき成長を求められます。

その一方で、社長が次の新しい目標、新しい夢をつくるのはなかなか難しい。

そこに大きな悩み、ジレンマが生まれ、気持ちも下向きになります。

「もっと会社を大きくしなくてはいけないとわかっているが、どうもその気が起きない」 というわけです。

売上3億円を達成したところで、こんな状態に陥ってしまった社長がいます。

ほぼ4年間、“低空飛行”が続きました。

その社長夫人に感心したのは、その間、ひと言も「しっかりしてください」「頑張って」などと口にしなかったことです。

じっくり構えて立ち直りを待つつもりだったのでしょう。器量の大きさを感じます。

この社長夫人は、何もしないで、ただ待っていたわけではありません。

社長が再起したときに備えて、将来の経営に役立つ資料をせっせとつくっていたのです。

社長の気持ちが上向いたときに、それを見せたら社長は俄然やる気になった。

「これから5億、10億、いや100億を目指そう」と意気軒昂に話すようになったそうです。

社長が意気消沈したときこそ、社長夫人の真価が問われます。

社長のビジネスパートナーとしての力の見せ所でもあります。