皆さんこんにちは、矢野千寿です。

社員を育てるためには、言いにくいことを言わなくてはなりません。

社員にとって耳障りなことも話さなくてはなりません。

多くの社長夫人は、そのことで悩みます。

「自分が社長の側について、社長の言葉をそっくりそのまま社員に伝えたり、社長が口にもしていないことを先取りして社員に言うのは、社員にとってはいやなことではないか。いやらしいと感じるのではないか」

そう考える根っこには、「社員によく思われたい」「社員にいやな顔をされたくない」という気持ちが働いています。

それで、社員に遠慮する。気を使って、言いたいことを言えなかったり、遠回しに言って相手が気づくのを期待したりする。

これではしつけはできません。

社長夫人が社員に対してはっきりものを言えるかどうか。

ここが、社長夫人が、ほんとうに社長夫人の役割を果たせるかどうかの分岐点です。

ここを超えると一皮むけて、ぐんと成長します。

「言うべきことを言えたときに、それまでの自分を超えたと思った」と振り返る社長夫人の声をよく耳にします。

「社員に悪く思われないか」とひるむヤワな自分を乗り越えるのに必要なのは、「自分がすることは社員のためになる」という確固とした思いです。

その確信を持てるまで、多くの社長夫人は悩みに悩むようです。

「私はずっと自問自答を繰り返していました」と話すのはレンタル会社の社長夫人。

「決まったことはやり続けよう」「挨拶をしよう」と細かい注意を繰り返して熱心にしつけに取り組みながらも、「これは自分のエゴではないか。

経営者の私利私欲のためではないか」という葛藤があったそうです。

長いこと悩んだ末にたどり着いたのが、

「社員と経営者は車の両輪だ。社員の自己実現と会社の成長発展は一体だ。
会社をよくするには責任を持って規律を守ることが絶対条件だ。
それは社員のためにもなる」

という考えでした。

「私利私欲ではなく社員のため」と確信を持った。

それからは迷うことなく、社員に厳しく接することができるようになったそうです。

母親は、子どもが憎くて叱るわけではありません。

子どもがよりよくなるように、幸せになるようにと思って叱ります。

その根底にあるのは、子どもを愛する気持ちです。

それがあるからこそ、躊躇なく子どもを叱ることができるのです。

社員のしつけも、社員に対する愛情をベースとして成立します。

興味深いことに、自分の中でしつけの理念が明確になって、それに得心が行くと、社員への愛情が強まり社員に対する思いが深まるようです。

しつけの考えに整理がついて、言いたいことがストレートに言えるようになった後に、

「社員がほんとうにかわいくなった」

「社員をとても大事に思えるようになった」と話す社長夫人を何人も知っています。

社員への愛情があってこその厳しいしつけです。

その前提がなければ、返ってくるのは反発だけです。