皆さん、おはようございます。

【これからの社長夫人は会社経営のプロになれ!】の著者で社長夫人戦力化コンサルタント矢野千寿です。

 

万が一のときの第一事業承継者は社長夫人だと覚悟してください!

あまり考えたくないことですが、万が一ということがあります。

社長が病気で倒れたり、亡くなった場合です。

社長夫人の場合は、会社があります。

夫の事業を継承するというレールができています。

その道を行くかどうかは別にしても、選択の余地がある。

それだけ恵まれていると言えますが、その一方で、社長夫人であるがゆえの大変さ、責任もかかってきます。

社長が急死した会社があります。

社長はワンマンだったので後継者が育っていない。

社長夫人は専業主婦で、会社がらみでしてきたことといえば、メーカーの人を手料理で接待する程度でした。

社長の死でメーカーが全部、取引きを辞めてしまったのですが、事情がわけがわからずにまごまごしているうちにテレビ局の車が会社に横付けになる。

社長夫人は、それで初めて、会社の倒産を知ったと言います。

悲惨なのは、社長夫人と子どもに何十億円という相続税がかかってきたことです。

相続をしない方法があることを知らずにいたのです。

ある土木会社の社長は、脳の病気で五十二歳の若さで急逝しました。

倒れてから息を引き取るまで十日ほどありましたが、その間に社長夫人は自分が社長になって事業を継ぐと決心し、周囲に根回しをして葬儀の席でそのことを発表しました。

これにより、この会社は社長の急死という危機を乗り越え事業を続けています。

社長が倒れると、否応なく、このような事態が社長夫人を襲います。

さしあたりの心配は会社の経営悪化や倒産です。家族の生活が脅かされます。

中小企業では、社長夫人が社長の借金の保証人になっているケースが多いです。

社長としては、自分が倒れることなど想定してませんし、会社が上向けば返済可能と踏んで、「たいしたことではない」と気軽に社長夫人を保証人にする。

「女房なのだから、夫の借金を保証するのは当たり前」
「心配ない。俺を信用しろ」

こんな思いもあるでしょう。

けれども、もし社長が死んだら、借金は社長夫人の肩に掛かってきます。

生活資金に対する不安の上に借金返済まで加わっては進退窮まります。

社長夫人は、一歩間違えば、このような負の可能性を持った立場であり存在なのです。

こういうことも含めて「社長夫人の宿命」と私は考えます。

宿命とは、「生まれる前から決まっているその人の運命」です。

「皆さんは、社長夫人という宿命を持って生まれてきているのです。そのような立場になるべくしてなったのです。そのことに気づいてください」

社長夫人向けの講座で、私は、よくそのように話しかけます。

社長夫人という立場を否定したり、そこから逃げ出そうとするのではなく、宿命として受け入れること。

そこに覚悟が生まれます。

覚悟ができると、宿命の中に使命が見えてきます。

社長夫人としての使命が明らかになります。

自分の使命に気づかないまま一生を終える人、自分の使命を生涯探し求めて生きる人、自分の使命を知り、それを果たしながら生きる人など様々です。

社長夫人には明らかな使命があります。

社長を助けることです。

社長を助けることで会社を発展させ、それによって社員の生活を守り、社会に役立つことです。

そのことに気づけば、心を傾けて使命を全うすればよいのです。

社長が倒れたときには、社長夫人が事業の第一継承者です。

業績のよくない会社、負債を背負っているような会社では後を引き継ぎたいと思う人はいないでしょう。

いい加減な人に頼んでは、会社をめちゃくちゃにされかねない。

ある会社では、窮状に陥ったときに経営内容を一番知っている取締役がサッサと辞めてしまいました。

お子さんなど次の世代にバトンタッチするまで、社長夫人が継ぐしかないのです。

これも宿命です。

「私が継ごう」という覚悟が必要です。

決して安易な道ではありませんが、未来に希望がある道です。

「あとから来るもののために、苦労をするのだ。我慢をするのだ。(中略)あとからあとから続いてくる、あの可愛い者たちのために、未来を受け継ぐ者たちのために、みな夫々自分で出来る何かをしてゆくのだ」

私が敬愛する詩人、坂村真民さんの言葉です。

使命を果たそうとする心の原動力として噛みしめていただきたいと思います。

社長夫人の皆さんは、社長夫人という宿命を持って生まれてきているのです。

そのような立場になるべくしてなったのです。

そのことに気づいてください。