中小企業で典型的な問題点は、経営上の数字が見えていないことです。

 

なぜそうなるのかと言えば、収入や支出などをきちんと処理していないからです。

 

ほとんどの社長は、売上だけに頭が行っていて、その上下に一喜一憂しています。

 

粗利益などを見てはいても、経営に活かすところまで行っていません。

 

数字を表面的に見ているだけなので、問題点も見えてきません。

 

お金の処理が、現金の出入りだけを管理するだけですめば、ことは簡単です。

 

入るお金が収入、出るお金が支出で、両者の差が利益になります。

 

収入と支出が短期間のうちに回転していれば、これですむかも知れませんが、

 

例えば、原材料の仕入れから製品の売却までの期間が長い場合にはおかしなことになります。

 

原材料を仕入れるときにお金を払います。

 

その原材料を使う製品を売ったお金が入るのは1年後だとします。

 

その間に決算があれば、仕入れだけしかしない今期の利益はマイナスになります。

 

そして来期は、原材料の支出なしに(今期で処理済み)、製品の代金が入ってくるだけですから代金がそのまま利益になります。

 

これでは、その製品に関する収支を正確につかむことができません。

 

これとは逆に、製品ができる前に前払い金をもらい、長期間かけて原材料を仕入れていく場合は、今期が代金だけのプラス、来期が仕入れだけのマイナスになります。

 

やはり、正確な収支がわからなくなります。

 

同じような処理をしていた建築会社があります。

 

工事が完了する前に前受金をもらい、それを売上として計上、材料費や下請けの手間賃などは、その都度支払って、それを経費として記録します。

 

売上が先にあがって、あとから経費が少しずつ出ていくわけです。

 

これでは、この工事でどのくらい利益が出るのかわかりませんし、

 

前受金の入金と経費の支払いの時期がずれれば利益が極端に変動することになります。

 

現にこの会社は、前年に3千万円の赤字だったのが、今年は1千100万円の黒字になるという乱高下ぶりです。

 

社長の経営をどう判断するのか難しいところです。

 

問題は、経理の仕方にあります。

 

実際のお金の出入りとは関係なく、工事が完了したときに代金を売上として計上し、各種の支払いも、売上計上のときに合計して経費として計上するのです。

 

これで、各工事についての収支が明確になり、年度ごとの業績が正確に把握できるようになります。

 

経営の良し悪し、問題点も見えてきます。

 

専門的に言えば、現金の出入りをそのまま処理する方法を現金主義、

 

現金の動きとは直接関係なく収支を処理する方法を発生主義といいます。

 

この建築会社は、発生主義で処理すべきところを現金主義で処理していたところに問題があった、ということになります。

 

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