皆さん、おはようございます。
【これからの社長夫人は会社経営のプロになれ!】の著者で社長夫人戦力化コンサルタントの矢野千寿です。
企業の成長のプロセスには、一定のパターンがあると言われます。
創業して5年から10年は、「売上を上げ、利益を出す」という利益体質の基盤をつくる期間であり、企業は体格的にも体質的にもゆるやかなカーブを描いて成長します。
この期間を創業期といいます。
この間に基盤ができれば、その後の10年間は成長期に入り、カーブが急上昇するようにどんどん成長します。
しかし、やがては安定期に入り、成長のカーブも横ばいとなり、やがて衰退期を迎えます。
「会社の寿命は30年」と言われるのは、その間、何の営業努力もしなければ、どんな会社も30年で衰退期に入ることを意味しているのでしょう、
ところで衰退期を迎えた企業には、いくつかの共通点があります。
第一は、経営者の理念の行き詰まりです。
たとえば、会社を立ち上げた頃、社長が抱いていたビジョンや目的、社会的使命などが暖昧になってきます。
同時に、それまでの経営戦略が時代のニーズに対応できなくなり、社長の心に迷いが出たり、経営意識が減退し始めたりします。
業績が悪化しても、抜本的な打開策が浮かびません。
根底には、「我流の経営」の行き詰まりもあるのでしょう。
積極的に人材育成をすることがなく、人を活かす経営に取り組んでこなかったせいかもしれません。
第二は、全社的なムードの低下です。
社長が経営意欲を失い、方針が不明確になれば、当然、社員の勤労意欲も減退します。
幹部社員も自分の役割を果たさなくなり、社歴が長い社員ほど旧態依然とした習慣にしがみつこうとするため、新しいことに挑戦しようという前向きなムードが社内からどんどん失われていきます。
今、長引く不況下にあって苦しんでいる中小企業はたくさんあります。
そして、社長自身が「業績が悪化したのはすべて不況のせいだ」などと口にする会社では、例外なくよどんだ空気が充満しています。
しかしほんとうは、不況下にあって業績が伸びない時代だからこそ、よどんでなどいられないはずです。
衰退の兆しが少しでも見えたら、抜本的な対策を打ち出さなければなりません。
じつを言えば、私が初めてA社を訪れたときに感じた空気にも、衰退の気配があったのです。
A社は、創業以来20年以上にわたり、ただの一度も赤字を出さず、コツコツと堅実に成長してきた会社です。
実質的には無借金経営の「超優良」企業です。
にもかかわらず、やはり20年もたてば、どこかによどみが生じてしまうのです。
むしろ財務状態がよすぎるからこそ、問題点が見えにくく、対策も立てにくいのかもしれません。
A社の衰退の始まりを示すわずかな兆しは、売上高にありました。
収益性は高い、だから利益は上がっている。
ただし、売上そのものは伸び悩んでいたのです。
企業は必ず成長しなければならないということを前提にすれば、A社は金融機関からの借入もないし、企業の安全性も収益性もある程度条件を満たしていると考えました。
しかし、現在の市場で今後、売上を3億円台に伸ばすには限界があるように思います。
それでは社員をこれ以上豊かにすることができません。
人件費は、あくまでも売上高100に対しての分配ですから、売上が伸びなければ人件費も今以上に上げることができないのです。
実際、中小企業の売上の規摸は1億から3億台が多くを占めていて、3億の規模を超えるには数年かかることもあります。
A社は3億を超えることのできる会社と思っているのですが、そのためには今のやり方を変えなければなりません。