皆さん、おはようございます。
【これからの社長夫人は会社経営のプロになれ!】の著者で社長夫人戦力化コンサルタントの矢野千寿です。
「会社の業績向上をもたらすのは売上のアップだけではない」という事例を紹介しましょう。
売上規模が20億円ほどの会社ですが、ここ数年は売上も利益も頭打ちになっていました。
社長はのんびりした性格で、「儲けはほどほどでいい」が口癖だったのですが、
さすがに不安になったのでしょう。
社長夫人を通して、私にアドバイスを求めてきました。
「1億円の売上アップをめざしたい」というのが社長の考えでした。
しかし、長引く不況下にあって、業界全体の売上も落ち込んでいました。
とくに有望な新製品開発や新市場開拓が望めるなら別ですが、
現状の商品と市場のままで売上を1億円も伸ばすのはほとんど不可能のように思われます。
私は社長夫人と一緒に決算書をめくり、他に突破口がないか探しました。
そして注目したのが「粗利益率」でした。
この会社の粗利益率は7.5%しかなかったのです。
私は社長夫人に言いました。
「見つけた!ここよ。この数字を1%上げれば、売上を1億円アップするよりずっと利益は増えるはず」
決算書には5つの利益が登場します。
1番目は、売上高から仕入高や製造原価などを引いて算出される「売上総利益」。
2番目は、売上総利益から販売費や一般管理費を引いた「営業利益」。
3番目は、営業利益に受取利息や配当金などの営業外収益を加え、
支払利息などの営業外費用を引いた「経常利益」。
4番目は、経常利益に特別利益を加え、特別損失を差し引いた「税引前当期利益」。
5番目は、税引前当期利益から法人税が引かれた「当期利益」これが「純利益」ということになります。
一般に「粗利益」と呼ばれるのは、いちばん最初の売上総利益のことです。
この段階で売上全体に占める粗利益率が7.5%では低すぎます。
しかし、その分だけ改善の余地があるとも考えられます。
この会社の売上は約20億円です。
したがって、粗利益率を1%上げただけでも売上総利益は2000万円アップします。
これに対し、無理な販売を行って売上を1億円伸ばしたとしても、売上総利益は750万円増えるだけです。
(粗利益率が7.5%で変わらないとしたとき)
どちらが効率的かは言うまでもないでしょう。
しかし、たとえ1%であっても商品の価格を上げるのは容易なことではありません。
1000円の商品ならわずか10円の値上げですが、それでも販売数に響いてしまうからです。
たかが1%、されど1%
そこで私たちはその1%分を価格への転嫁ではなく原価を下げることで実現しようと考えました。
とりあえず1%分をさらに細かく分け、原価や販売費や管理費など、いたるところで少しずつ削ることにしました。
その結果、半年後には粗利益率1%アップに相当する2000万円の経費の削減に成功しました。
そればかりか、各部署で「コスト削減・利益率アップ」の意識が高まり、
沈滞気味だった社内のムードまで格段によくなったのです。
この会杜の経営改善は、決算書の数字を洗い直すことから始まり、目的どおりの成果を上げただけでなく、
オマケとして全社員の意識改革にも成功したわけです。